リンゴ・タウン
だからね、若いきょうだい、きみもきたまえ。時は待っていないし、南の国はきみを呼んでいるのだ。二度と帰らない時がいってしまわないうちに、冒険してみるんだな。ただ戸を一つしめて、陽気に一歩ふみだせば、それでいいんだ!古い生活に変わって、新しい生活がはじまるのさ。
「ふぅん… それじゃカールは空を飛んだことあるの?」
「いや、あるハズがない」
「だよね!みんなただ夢みて浮かれてるだけだし」
「いいじゃないか!リッツは科学を信じてる。オレは神秘を信じる。それの何が悪い?主義が違うってだけで争うのは馬鹿げてるよ」
「……」
「何だよ?」
「いや…カールがそんなマトモなことを言うとは思わなかったから…」
「おまえな…オレを何だと思ってるんだ?」
でも確かにカールの言うとおりだ。夢見ることは悪くない。僕らだって、空を飛ぶための飛行機を作ってるんだから……
「カール、僕ら絶対に飛ぼうな」
「ん?ああ」
世紀末の終わる一九九九年…その年に起きた大彗星衝突事件は、世界の終わる予言が的中したんだと、誰もが思ったに違いない
そうだ…世界はあの日以来確実に変わった。いまでは、かつての半分になった地球に暮らす人々は、この恐るべき事実をそれぞれの言葉で理解しようとしていた。
神と悪魔の最終戦争
世界の終末
秘密結社の陰謀
異星人襲来説
などが主なものだけど、そのなかで多くの支持を集めたのが、「科学の勝利」というものだった。
人類の科学が世界を破滅から救ったのだ!
そう演説する政治家が現れて、多くの人々はその言葉に賛同していった。
それが事実かどうかは、何の問題もなかった。
生き残った人々も生死の境をさまよっていたから、そこから抜け出せるなら何でもよかったんだ。
不安と恐怖は、やがて大きなうねりとなって、第二次科学革命を起こした。
いまでは猫ですら明るい未来を信じている
それなら僕らだって、何でもできるんじゃないか?
いまもこうして生きているんだもの………
リッツは夜明け前に不思議な夢をみた
-そこの少年 そんなに荷物を抱えてどこへ行く?
-『幸福』を探しに行くんだ。
-そうか、それはいい これからはどんなことだって起こるぞ
-どんなことでも…?
-気を付けていくといい
「……う…うぅーん……」
目が覚めると、いつもの朝だった
カールはまだ隣のベッドで眠っている
夢の内容はすぐに忘れてしまった
今日は晴れるらしい
僕らはいつものように出掛けていった。
これは二人の少年 リッツとカールが空を飛ぶまでのお話
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